仙台高等裁判所 昭和32年(う)383号 判決
職権をもつて調査するに、原判決は被告人に対し未決勾留日数中五〇日を懲役三年の本刑に算入する旨の言渡をしたが、記録によれば、被告人は、昭和二八年一〇月一〇日五所川原簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年六月に処せられ、昭和三一年三月二六日からその執行を受け、昭和三二年二月五日仮出獄を許されて出所し、右仮出獄期間中に本件窃盗、贓物収受等の各犯行を犯したため同年五月七日右贓物収受被疑事件につき勾留状の執行を受けて留置され、勾留三七日目の同年六月一二日前刑につき許された仮出獄を取り消されて同日からその残刑(七月二〇日)の執行を受け、同年八月三日に至り始めて右勾留を取り消されたものであることが認められるから、原判決が本刑に算入した未決勾留日数五〇日は六月一二日以降の仮出獄の取消により前刑の執行を受けてからの分一四日を含むことが明らかである。しかし、同日以降勾留が取り消されるまでは懲役刑の執行と未決勾留とが観念上併存していたには相違ないが、事実上は懲役刑の執行としての一個の拘禁が存在していたにすぎないものと認むべきであるから、かように懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるもので、違法の措置といわなければならない。従つて、原判決が本刑に算入すべき未決勾留日数中に懲役刑の執行と重複する分を含めたのは、そのかぎりにおいて刑法二一条の適用を誤つたものであり、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄は免れない。
(裁判長裁判官 板垣市太郎 裁判官 有路不二男 裁判官 杉本正雄)